以前出演させていただいたインターネットラジオで、「本来自己とは何か」「なぜ人は自分自身の哲学を持たねばならないのか」──そんな根源的なテーマを語らせていただきました。

本記事では、自分らしい哲学を持つことの大切さと、それがどう経営や働き方に反映されているのかを綴ります。

借り物の哲学では、人生は切り開けない

20代、30代の頃の私は、偉人の言葉や成功者のノウハウを「真似る」ことで人生を前に進めようとしていました。もちろん、それが全く無意味だったとは思いません。しかし、どれだけ学んでも、自分の中に“しっくり”くる感覚はなかった。なぜなら、それは「他人の生き方」だからです。

40代を過ぎ、困難や違和感の中で気づきました──「自分の外にある正解を求めているうちは、自己の内なる声と出会えない」と。

だから私は、自分だけの問い、自分だけの言葉、自分だけの地図をつくることにしました。これを私は「自分バイブル」と呼んでいます。

“本来自己”で書き記す、自分のバイブル

日々、仕事や生活に追われていると、人は「本来自己」との接続を失いがちです。私もそうでした。だからこそ、意識的に“本来の自分”になれる時間を設けています。たとえば、静かな部屋でアロマを焚きながら、心が澄み渡る時間に浮かんだ思考を記録する。

その断片を綴り、構造化し、自分の言葉でまとめる──それが“バイブル”となり、人生や経営の羅針盤となるのです。

この習慣は、まさに「思考の自炊」です。他人の意見を咀嚼するだけでなく、自ら問い、自ら定義し、自らの信念として確立する。まさにWatabe哲学の真骨頂である「Live My Way」の実践でもあります。

人生の使命とは「リノベーション」

私自身のバイブルの核にあるのは、“リノベーション”という概念です。私は、自分が生まれ持った違和感──集団にうまく馴染めない、常識に馴染まない──を弱点ではなく、資質と捉えました。

古い構造を壊すのではなく、活かしながら未来の形に組み替えていく。私はそれを「リノベーション型の生き方」と呼んでいます。

経営もまた、過去の資産を否定せず、次の時代の文脈にアップデートする営みだと思うのです。

本来自己に根ざした経営

この「自分バイブルづくり」は、私個人のライフワークであると同時に、組織運営にも直結しています。人は「会社に合った成長」ではなく、「自分が望む成長」でなければ、本当には変われません。

だからこそ、社員一人ひとりが「自分らしい哲学」を持ち、自律的に働ける環境を整えること。それが私の経営スタイルであり、「活個開共」──個が活き、共に拓く組織モデルの核心です。

おわりに

ラジオ収録では、自分の中にある“魂を揺さぶられる価値観”についても語りました。偉人の言葉に触れ、自分と共鳴する瞬間。そこに「自分だけの道」のヒントが宿っています。

哲学とは難しい理屈ではなく、自分の魂と日常を結ぶ「行動の軸」であり「選択の物差し」です。借り物ではなく、自分自身の言葉で生きていく。そんな人が増えていく社会を、私は心から願っています。